
『さよならララ』とはどんな作品か
『さよならララ』は、アニメスタジオ・キネマシトラスの創立15周年記念作品として制作されたオリジナルテレビアニメです。2026年7月5日よりTOKYO MX・BS朝日・読売テレビ・AT-Xで放送が始まりました。監督は『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』で副監督を務めた小出卓史、シリーズ構成は川原杏奈、キャラクターデザインは谷紫織が担当しています。
物語の下敷きになっているのは、アンデルセンの童話『人魚姫』です。1777年、海の王ローワンのもとに生まれた人魚の王女ララは、人間の王子に恋をし、魔女グレイスの薬で人間の姿を得ます。しかし「本当の愛」を得られないまま泡となって消えてしまう——。そこから約200年後、ララは滋賀県・琵琶湖でよみがえり、大津茉里と出会い、もう一度「本当の愛」を探す旅に出ます。
オープニングテーマはいきものがかりによる同名曲「さよならララ」(歌:吉岡聖恵)。デジタル制作でありながら昭和〜平成初期のセルアニメを思わせるノスタルジックな質感を追求しており、OP映像の一部は実際にアナログ作画で制作されています。第1話のエンディングには「In tribute to Hans Christian Andersen」の献辞が添えられました。
この記事では、①人魚・海と陸の異種族の恋 ②童話やおとぎ話の翻案 ③少女ふたりの関係性 ④「愛」を知るまでの喪失の物語という4つの軸から、『さよならララ』が刺さった人に響く作品をBEST10で紹介します。

第1位:凪のあすから
『さよならララ』の空気に最も近いのがこの作品です。2013年10月から2014年3月まで全26話で放送されたP.A.WORKS制作のオリジナルアニメで、監督は篠原俊哉、シリーズ構成は岡田麿里が務めました。
舞台は、海の中に暮らす「海村」の人々と、陸に暮らす人々が分かたれた世界。海と陸という越えられない境界、禁じられた想い、そして物語中盤で訪れる「時間の断絶」が、登場人物たちの関係を容赦なく作り変えていきます。取り残される側の痛みと、それでも愛を確かめようとする姿勢は、200年の時を飛び越えたララの立ち位置とそのまま重なります。海中の光の表現も屈指の美しさで、映像面でも満足度の高い一本です。
第2位:崖の上のポニョ
2008年公開、スタジオジブリ・宮崎駿監督の劇場アニメ。こちらも『人魚姫』を下敷きにした翻案作品で、海の世界に生きる女の子が人間になることを望み、陸へ上がってくるという骨格は『さよならララ』と共通しています。
大きく違うのはトーンです。ララの物語が喪失と切なさを抱えているのに対し、ポニョは徹底して明るく、生命力にあふれています。「人魚姫という原型を、現代日本の風景の中でどう語り直すか」という同じ課題に、まったく別の答えを出した作品として並べて観ると発見が多いはずです。海辺の町の描写や、水そのものをキャラクターのように動かす作画は今なお圧倒的です。
第3位:さよならの朝に約束の花をかざろう
2018年公開、P.A.WORKS制作、岡田麿里の初監督作品です。老いることのない一族「イオルフの民」の少女マキアが、外の世界で人間の赤ん坊を育てる物語。
時間の流れ方が違う者どうしは、どうやって愛し合えばいいのか——このテーマは、200年の断絶を抱えたララがまさに直面しているものです。タイトルに「さよなら」を掲げている点も含め、作品が出す結論の重さは『さよならララ』を追ううえで一つの補助線になります。ハンカチは必須です。

第4位:プリンセス・チュチュ
2002年から放送された佐藤順一監督のオリジナルアニメ。アヒルが少女の姿を与えられ、心を失った王子のために踊る——という、童話のフォーマットそのものを物語の中に取り込んだ野心作です。
『さよならララ』が「泡になって消えた、その後」を描こうとしているのと同じく、本作も**「物語に定められた結末から、登場人物は逃れられるのか」**を正面から問います。前半のおとぎ話的な可愛らしさから、後半にかけて物語が自らの構造を食い破っていく展開は、20年以上を経てなお独特です。童話翻案ものが好きなら避けて通れません。
第5位:海獣の子供
五十嵐大介による漫画(小学館・全5巻)と、2019年公開のSTUDIO4℃によるアニメ映画。海で育った少年たちと出会った少女が、海の巨大な祝祭に立ち会う物語です。
ストーリーの相似というより、海という場所の得体の知れなさ、人ならざる存在との接触がもたらす畏れの描き方で通じ合います。ララの造形が「可愛い人魚姫」に留まらず、魚を頭から食らう生々しさを併せ持っているように、本作も海を美しいだけのものとして描きません。原作漫画の描線の迫力も、アニメの色彩設計も、どちらも体験する価値があります。
第6位:人魚の森(人魚シリーズ)
高橋留美子による人魚伝承を題材にした連作。人魚の肉を食べた者は不老不死になるが、多くは化け物へと変わり果てる——という、日本に伝わる八百比丘尼の伝説を下敷きにした残酷な物語です。1990年代にOVA化され、2003年にはテレビアニメシリーズも制作されました。
人魚をロマンではなく「呪い」として描く視点は、ララが背負わされた掟や罰と響き合います。永い時間を生き続けてしまうことの苦さを味わいたい人に。
第7位:メイドインアビス
つくしあきひと原作、そして『さよならララ』と同じキネマシトラスが制作した2017年のテレビアニメ。可愛らしい絵柄で始まりながら、深層へ進むほど容赦のない代償が突きつけられていく構成で知られます。
丸みのあるキャラクターデザインと、その裏に潜む残酷さという二重構造は、キネマシトラスがララでも発揮している持ち味です。同スタジオの作風を掘りたいなら、まずここから。

第8位:少女☆歌劇 レヴュースタァライト
2018年放送のテレビアニメで、制作はキネマシトラス。小出卓史監督が副監督として参加した作品でもあります。
舞台少女たちが「星摘みの塔」をめぐって競い合う筋書きの裏で、寓話や戯曲の構造そのものが物語のエンジンとして機能する点が特徴です。少女ふたりの約束と再会を軸に据えた語り口は、ララと茉里の関係を追ううえで補助線になります。監督の作家性を知るという意味でも外せません。
第9位:魔法使いの嫁
ヤマザキコレによる漫画で、2017年にテレビアニメ化。居場所のなかった少女チセが、人ならざる魔法使いエリアスに引き取られ、共に暮らしながら生き方を探していく物語です。
異物として世界に放り込まれた少女が、誰かと暮らす中で自分の輪郭を取り戻していく過程は、大津家に居候するララの日常パートと同じ手触りを持っています。イギリスの田園と妖精譚を織り込んだ美術も見どころです。
第10位:宝石の国
市川春子の漫画(講談社『月刊アフタヌーン』)で、2012年の連載開始から2024年に全13巻で完結しました。2017年にはオレンジ制作でフル3DCGのテレビアニメも放送されています。
人ではない身体を持つ主人公が、喪失を重ねながら決定的に変質していく物語。「元の自分にはもう戻れない」という一点において、泡から蘇ったララの立場と深く共鳴します。完結済みなので、一気に読み通せるのも利点です。
番外編:ヴァイオレット・エヴァーガーデン
2018年放送、京都アニメーション制作。「愛してる」という言葉の意味がわからない少女が、他人の手紙を代筆しながらその答えに近づいていく物語です。「本当の愛」を探すというララの課題設定とテーマが直結しているため、11本目として挙げておきます。
まとめ:どこから観るべきか
『さよならララ』の切なさと種族の壁に惹かれたなら凪のあすから、童話の翻案という仕掛け自体に興味があるならプリンセス・チュチュ、制作スタジオの作家性を追いたいならメイドインアビスから入るのがおすすめです。
なお『さよならララ』本編は、Prime VideoやDMM TVなどの定額見放題サービスで配信されています(2026年9月時点。Netflixでは配信されていません)。2026年10月には電撃文庫からノベライズの刊行も予定されており、まだまだ広がりが期待できる作品です。配信状況は変動するため、視聴前に各サービスの公式ページで最新情報をご確認ください。